【東京の生活をめぐる旅】—南千住 芭蕉さんとまちあるきMAP その2—

2016年度作品「【芭蕉がまたぐ江戸と平成】—南千住 芭蕉さんとまちあるきMAP その1—」については以下のURLよりご覧いただけます。
http://nobuhisayamamoto.com/haiku-trip-to-minamisenju

 


 

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東京都荒川区は、木造密集地や細い路地、隅田川の護岸対策など、防災の面で様々な課題を抱えています。
一方、景観の観点から見てみると、”弱点”とされるそれらは下町らしい特徴的な景観をつくり出しています。そこで荒川区景観まちづくり塾では、荒川区を〔①町屋・荒川〕、〔②尾久〕、〔③日暮里〕、〔④南千住〕の4つの地域に分け、街の防災・景観について調査を行いました。

その調査の結果をもとに、「防災&景観マップ」を作成、荒川区景観まちづくりシンポジウムにて「荒川区景観まちづくり塾」一年間の成果を報告するイベントを昨年に引き続き開催され、4つのグループごとにプレゼンテーションを行いました。

僕たち南千住班は、歴史的に多い南千住の宿泊施設の多さに注目して調査を行いました。
昨年に引き続き、「芭蕉と一緒に南千住の街を再発見する」というテーマで、景観・防災の専門家であり、かつ南千住にゆかりのある俳人 松尾芭蕉にお願いして、一緒に俳句を詠みながら南千住のまち歩きを楽しむという企画です。


◉ 作品/【東京の生活をめぐる旅】 -荒川ワクワク防災&景観マップ 南千住版-

<(PDF)>

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◉ 作品ができるまで(「荒川区景観まちづくり塾」第2期の活動について)

1.背景 -南千住は、今も昔も宿泊の街-

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南千住駅の南側を中心に、街には宿泊施設が密集しています(MAP紫部分)。
この辺りはかつて山谷と呼ばれて、日光街道に沿った地域として、日雇い労働者のための木賃宿がち並んでいました。現在ではゲストハウスに姿を変えて、南千住の多くのエリアに宿泊施設は点在しています。
江戸時代の宿場町から始まり、木賃宿、ゲストハウス、、歴史的に見ても南千住は”宿泊の街”でした。
その安さに加え、JR常磐線、東京メトロ日比谷線、つくばエクスプレス、都電荒川線といった交通の便の良さも手伝い、南千住は外国人観光客をはじめとする旅行者の宿泊地として人気を集めています。

 

2.調査 -ゲストハウスにインタビュー-

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旅行者は南千住でどんな風に過ごしているのか、その実態を調査するため、南千住のまちあるきに加え、ジョイフル三ノ輪商店街にある「サトウ サンズ レスト」というゲストハウスのオーナー渡邉さんに、インタビューさせていただきました。

 

3.調査結果 -南千住は生活地?それとも観光地?-

インタビューの中で、旅行者は20〜30代の方で、中国語や韓国語圏の方が多いことがわかりました。
そして最大の疑問、なぜ南千住を選んだのかという質問には「もう渋谷や浅草は十分、もっと東京の日常生活を体験したい!」という声が上がっていると言います。路地や都電、商店街、、生活する人々の中に入って、「東京の日常」を旅する、日中は別の観光地へ行ったとしても、朝や夜の時間を生活者になったような気分で過ごしたいということのようです。

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では具体的にどんなスポットに出かけるのか。例えば朝ごはんはコンビニや商店街のおにぎりも人気ですが、松屋などのチェーン店が特に人気のようです。ご飯、味噌汁、漬物というように日本食の典型でかつ安いのがその理由です。
それからランニング、シューズを持参してくる方も多いとのことですが、そんな方には汐入スーパー堤防がおすすめ。住人もランニングする様子が見られますが、隅田川にあわせてスカイツリーも見える、桜並木が気持ちのいい場所になります。 ちなみに汐入スーパー堤防に植えられている桜は樹種が多く、開花時期が異なるため、長い時間楽しめるスポットです。桜を追いかけて日本に来る旅行者もいるようで、そんな旅行者にとって南千住は絶好のスポットかもしれません。
お土産には、商店街の味噌や文具店のポチ袋、スーパーやドラッグストアなど、普段、住人が利用するお店やグッズが人気のようです。
スポットとしては、都電や路地などが人気で、特に商店街は彼らにとってアミューズメントパークのように感じるようです。銭湯はタトゥーOKで、ちょっとお湯が熱いのはありますが、人気のスポットです。 (他に、聖地巡礼と行って、ドラマや映画の撮影に使われたロケを巡るのも人気のようです。)

このように見てみると、「南千住は住む人のための風景」という印象がありますが、実はそれがそのまま旅行者にとって「東京の日常」を体験できる魅力的な風景にもなっているということに気づきます。  加えて、南千住には中華料理、韓国料理のお店があり、ネイティブスピーカーが営むお店も多く存在します。そのことが旅行者の安心感に繋がっているようです。

 

4.課題 -街の課題は? 開発ではない南千住の回答-

観光の観点から見て、安心感のある魅力的な街で、それはいわゆる観光地とは違うけれども、「東京の日常」を体験できる、独特なエリアである南千住。
そんな街の課題ですが、この魅力を活かすためには、まずは住人がこの魅力について知ることが重要だと考えました。観光のために街を開発するのとは違う、南千住のやり方があるのではないかと思います。

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もちろん案内所の整備は必要かも知れません。
成田空港から南千住へのアクセスを考えると、実は町屋から都電を使って来る「三ノ輪橋駅利用者」と、上野経由で来る「南千住駅利用者」の2者がいる、つまり南千住の交通拠点は2箇所だということがわかりました。そのため、案内所は2箇所あるのが理想ですし、お互いを繋ぐ道やその案内が不足していることは問題です。ただし、案内所も商店街の空き店舗を利用するなどして、開発とは違う”おもてなし”を考えられるかもしれません。
旅行者が南千住にある伝統工芸品を目にしたり、体験したりできる場所が限られていて、もしもっと身近にあればお土産にもできるかも知れないというお話もありました。案内所でそう行った機会を設けられたら、案内所の維持管理の助けになるかもしれません。

 

5.まとめ -住人のための風景がそのまま旅行者のための風景に 芭蕉さんとまちあるきMAP

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これら調査結果を踏まえて、南千住班のMAPのコンセプトは、『「東京の日常」を見つめ直す』としました。 いきなり外国人観光客に向けた観光MAPをつくるのではなく、まずは住人に、南千住が「東京の日常」を感じられる観光的魅力にあふれた街なんだということを伝えるためのMAPづくりを心がけました。
景観、土木・防災の専門家、さらに南千住にゆかりのある松尾芭蕉さんに、昨年に引き続きご登場いただいて、観光客と一緒にまち歩きしてもらいながら、街の魅力を再認識する企画です。

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例えば、以下のような点を意識してデザインしました。

・観光客にとって「東京の日常」を感じやすい、街の西側を中心に作成
・掲載したスポットやルートは、観光名所ではなく、コンビニやジム、スーパー、コンビニ、外食チェーン店、薬局など、住人の目線で普段利用する「東京の日常」を選定して掲載
・街の空気感と特徴を伝えられるよう、住人(まちづくり塾参加者)の俳句も一緒に掲載
・外国人観光客が手に取っても魅力を感じてもらえるように、凡例にはピクトグラムと英語を併記し、飲食物やお土産、乗り物、人気スポット、一時集合場所はイラスト化して対応

東京オリンピックも間近にせまって来る中で、「南千住はあんまり観光とは関係ないよね」、「バックパッカーが寝るためだけに来てるんでしょ」、というこれまでの南千住に対する考え方が、「南千住は住人のための風景をつくってきたけれど、それはそのまま旅行者にとっても魅力的な風景なんだよ」と胸を張って言える、そんな街になることを祈って、このMAPを提案します。


◉ 成果報告イベント「荒川区景観まちづくりシンポジウム2017」について
荒川区景観まちづくりシンポジウムでは、一年間の活動の成果報告として、各グループが作成した「荒川ワクワク防災&景観マップ」をプレゼンテーション。
私たち南千住班は【東京の生活をめぐる旅】について報告し、来場者からの投票にて最多得票を獲得、最優秀賞を受賞しました。

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・シンポジウム概要

荒川区景観まちづくりシンポジウム
期間:2018.3.3(fri) 13:00 - 16:30
場所:サンパール荒川(第7集会室)
講師:中村良夫(東京工業大学名誉教授、平成29年度荒川区景観審議会会長)/岡田智秀(日本大学理工学部まちづくり工学科教授)
主催:荒川区/荒川区景観まちづくり推進委員会
協力:日本大学理工学部まちづくり工学科 岡田研究室
後援:荒川区建設業協会/東京都建築士事務所協会荒川支部/東京商工会議所荒川支部/荒川ケーブルテレビ
イベントホームページ:https://www.city.arakawa.tokyo.jp/event/zenevent/keikansymposium.html

<告知ポスター>

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◉ 荒川区景観まちづくり塾について

HAIKUtrip_85日々の生活が営まれている街には様々な景観があります。良い景観は住環境を整え、生活に潤いをあたえてくれます。また、 荒川区における重要な課題に「防災」があります。首都直下地震が想定されている現在、木造密集市街地を多く抱えた荒川区では、区民の安全・安心のために数 多くの防災に関する施策を進めています。
そこで、「防災と景観」をテーマに「景観まちづくり塾」を開催いたします。慣れ親しんだ街の風景の中に 溶け込み良い景観を造る防災対策、災害に強く、風景を愛でながら愛着の持てる街を作るにはどうしたらいいのかなど、「防災」と「景観」の両輪で進めるまち づくりについて、一緒に学び考えていきます。
(「荒川区景観まちづくり塾」ホームページより)

全9回のカリキュラムで構成され、専門家を招いた講義や、学生をファシリテーターとして開催されたワークショップ、成果を発表するプレゼンテーション・講評会が開催されました。

 

<告知ポスター>

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・カリキュラム(全8回)

第1回 講義1「防災と景観、下町の風情を残して安全をはかる」
日時:平成29年7月29日(土)15:30-17:30
講師:篠原修(東京大学名誉教授、GSデザイン会議代表)/岡田智秀(日本大学理工学部まちづくり工学科教授)

特別講座 講義2「都市交通としての河川利用と水辺景観」
日時:平成29年9月16日(土)15:00-17:00
講師:宮村忠氏(関東学院大学名誉教授)

第2回 体験型ワークショップ「災害対策支援船に乗船し、3時間のリバークルーズ」
日時:平成29年9月30日(土)12:30-17:30
講師:荒川下流河川事務所職員/岡田智秀(日本大学理工学部まちづくり工学科教授)

第3回 講義3「景観計画や緑の取り組みなど、荒川区の施策や実情について」
日時:平成29年10月14日(土)13:30-15:30
講師:荒川区防災都市づくり部都市計画課 課長 川原、都市計画担当係長 永澤

第4回 ワークショップ1
日時:平成29年10月28日(土)13:30-16:00
講師:岡田智秀(日本大学理工学部まちづくり工学科教授)

第5回 ワークショップ2
日時:平成29年11月25日(土)15:00-16:30
講師:岡田智秀(日本大学理工学部まちづくり工学科教授)

第6回 ワークショップ3
日時:平成29年12月16日(土)13:30-15:30
講師:岡田智秀(日本大学理工学部まちづくり工学科教授)

成果発表会・修了式 荒川区景観まちづくりシンポジウム2017
日時:平成30年3月3日(金)13:00-16:30
審査員:中村良夫(東京工業大学名誉教授、平成29年度荒川区景観審議会会長)/岡田智秀(日本大学理工学部まちづくり工学科教授)

荒川区景観まちづくり塾ホームページ:https://www.city.arakawa.tokyo.jp/kankyo/machidukuri/keikan/keikanjuku/keikanjuku2017.html


◉ 南千住班メンバー

塾生:大川正明/柴田直美/原田シズエ/関根國哲/山本展久
世話人:関智子/長澤慎二
日本大学学生:小林侑輝


【東京の生活をめぐる旅】
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